今回は鉄筋コンクリート構造の躯体を構成するための作業であるコンクリート打設について確認していきます。
コンクリート打設は型枠内へ生コンクリートを流し込み充填させる作業です。
鉄筋コンクリート造の建物はもちろんですが、鉄骨造や木造の建物であっても多くの基礎は鉄筋コンクリート造の躯体でて構成されています。
建設工事に携わるうえで必ずと言っていいほどの頻度で管理を行うコンクリートの打設作業について、若手技術者が知っておきたい知識をまとめて記載していますので最後まで読んでください!
この記事で分かること
1.コンクリート打設とは
2.コンクリート打設の手順
3.コンクリート打設時に注意するポイント
順番に確認していきましょう!
コンクリート打設とは
コンクリート打設とは、生コンクリートを型枠内などへ流し込み、充填させる作業のことです。
生コンクリートは工場で練り混ぜられて製造されてから、時間経過とともに硬化して強度が発現していきます。
工事現場に到着した生コンクリートを硬化してしまう前に、型枠へ充填させる必要があります。
型枠内には鉄筋が配筋されてるのでただ流し込んでいくだけでは適切に充填できませんし、一度に大量の生コンクリートを流し込んでしまうと型枠が耐えられずに壊れてしまう危険性があります。
安全で品質の良いコンクリートを打設するためには、適切な施工管理が必要です。
設計で計画された形状や強度を確保するために必要な準備や、打設手順を確認していきましょう!
コンクリート打設の手順を確認
ここでは生コンクリート打設の作業手順を確認していきます。
コンクリート打設方法の選定
コンクリートの打設方法は、大きく分類すると3つにわけることが出来ます。
生コンクリートの打設数量や、打設条件によって適切なものを選択します。
コンクリートポンプ車を使用した打設方法
コンクリートポンプ車の後方に生コン車をセットして、コンクリートポンプ車の配管を経由して生コンクリートを型枠内へ圧送していく方法です。
コンクリートポンプ車の能力によって作業範囲や圧送量に違いがあります。
生コンクリートの打設速度や作業性・時間内に打設を終えることを考慮すると、ポンプ車のブームですべての数量が打設できることが理想的です。
コンクリートホッパーやバケットを使用した打設方法
クレーンを使用してコンクリートホッパーを打設場所まで楊重して打設を行う方法です。
ポンプ車での打設に比べて打設速度が遅いため採用の優先度は低い方法です、ポンプ車での打設が出来ない場合に選択されます。
手押し車を使用したネコ打ち
手押し車に生コンクリートを受けて、打設場所まで運搬して流し込む工法です。
狭い範囲の捨てコンクリート打設など、少量のコンクリートを打設するときに採用されます。
生コン車が寄り付ける場所であれは、生コン車から型枠へ向けて直接流し込んでしまっても◎
コンクリート打設計画作成
コンクリート打設工事を行うために、コンクリート打設計画書を作成します。
コンクリート打設計画書には、どのような配合で、どのような手順で、どのように打設を行い、どのように養生を行うか、といったコンクリート打設作業に係る全ての情報を記載します。
この打設計画書をもとに、打設前にコンクリート打設に係る各工事業者さんたちと打ち合わせを実施する重要な資料です。
かならずコンクリート打設時点で、作業に係る全員が打設順序や注意する事項を理解できるてことが良いコンクリートを構築するためのポイントです!
コンクリート打設前に行う準備作業
生コンクリートの打設は、鉄筋の配筋が完了し、型枠を建て込みが終わり、打設前検査に合格してから実施されます。
コンクリート打設前の準備として、コンクリート打設時の仕上げのための準備と、次工程のための準備を行います。
コンクリート打設時の仕上げのための準備
・コンクリート天端仕上げ高さの基準を準備する
コンクリートをどの高さで打設するかは最終的な仕上げを考慮しても猶予は数ミリです。
計画した高さで表面を仕上げるために、仕上げ面から1,000程度高い位置に高さの基準を設置しておきます。
床スラブや土間に勾配がある設計では、打設高さの基準となるポイントを設置します。
天端ポイントなどと呼ばれる製品が採用されることが多く便利なアイテムです、使ったことの無い方は検索してみてください。
・型枠内部の水洗い清掃を行う
型枠内部に木の粉や、鉄筋削りごみなど、コンクリ内部に不要なものを巻き込まないように清掃を行います。
型枠の一部に掃除口を設けておき、ハイウォッシャーなどで流して綺麗しましょう!
・構造スリット位置や金物位置が分かる様に印や看板を設置
コンクリート打設時に下階でたたきなどを行っている作業員さんは、型枠内の金物や構造スリットの位置が分かりにくい状況で作業をしています。
ラミネートした看板などを型枠に張り付けてスリット位置を見える化しておくと、充填確認が容易になるので品質向上につながります。
次工程のための準備
下の階から打設床面高さへ基準墨を出すための準備をしておきます。
下階の基準墨の交点から200㎜ほどずらした位置にボイドなどで床スラブに穴をセットします。
コンクリート打設後にこの穴から下階の基準墨を下げ振りなどを使用して上階へ基準墨を移します。
既製品のボイドセットを利用すると墨穴の後処理が楽になるのでオススメです。
コンクリート打設前周知会実施
コンクリート打設当日には、コンクリート打設に係る業種・作業員全員に向けて打設前の周知会を実施します。
この周知会は事前打ち合わせとは別に、打設作業を行う前の最終確認として朝礼後などに実施します。
生コンクリート打設かかわる内容を、関係者全員で共有することが良いコンクリートを打設するための重要なポイントです!
コンクリートの受入検査の実施
工場で製造された生コンクリートを現場で受け入れるときに、納入されたコンクリートが計画された品質であることを確認する受入検査を実施します。
コンクリートの品質は建物の強度に大きく影響をします、構造設計で必要な強度を計算して計画されているため、施工時には適切に受入検査を行って必要な品質が確保されている生コンクリートあることを確認することが重要です。
受入検査の実施項目
生コンクリートの受入検査で確認する項目です。
コンクリート打ち込み
生コンクリートの受入検査に合格してから打ち込み作業を開始します。
コンクリートポンプ車を使用する場合には、先送りモルタルをポンプ車と配管内に流して内部のつまり防止を行います。
このときに使用した先送りモルタルは、躯体設計配合とは異なるため型枠内に打ち込まずに産業廃棄物として適切に廃棄します。
コンクリートの打ち込みは計画した順番に実施
コンクリートの打設順序は、生コンクリートの打ち重ね時間を考慮して事前に設定するため、打設状況によって順序を変更する場合には打ち重ね時間を基準から超えないように注意しましょう。
外気温 | 25°未満 | 25°以上 |
打込み継続中における打重ね時間間隔 | 150分以内 | 120分以内 |
練混ぜから打込み終了までの時間 | 120分以内 | 90分以内 |
コンクリートの打ち重ね時間を過ぎてしまうと先に打設したコンクリートと後から打設するコンクリートが混ざり合わずに、一体化しない品質不良であるコールドジョイントが発生してしまうリスクがあります。
生コンクリートの締固め
生コンクリートを型枠内部に十分に充填させるために、締固め作業を行います。
生コンクリートの締固め方法は、主に内部振動と型枠振動です。
内部振動による締固め
内部振動方式で最も多く採用される方法は、振動棒をコンクリートの内部に挿入して締め固める方法です。
型枠内部のコンクリートに残る空気の層(空隙)を解消させて隅々まで充填させる目的で使用します。
打ち重ね部分では先に打設したコンクリート部分まで差し込むことでコールドジョイントを防止することが出来ます。
型枠振動による締固め
型枠振動方式では型枠の外側から型枠用の振動機を使用したり、木づちで叩いて充填させます。
木づちて型枠をたたくと返ってくる音で硬くないに隙間なく生コンクリートが充填されたか確認できます、必ず実施しましょう。
コンクリート表面仕上げ
生コンクリート打設後の表面のトンボやコテを使用して平滑になるように仕上げを行います。
表面仕上げは、次工程の工法や最終仕上げによってどのように仕上げるかを計画して設定します。
・均し
トンボを使用してコンクリートを平滑に均した仕上げです、捨てコンなどで使用します。
・木鏝押さえ
生コンクリートをトンボで均し作業を行った後、木鏝を使用して平滑に仕上げる方法です。
最終仕上げがタイル張りなど、コンクリート表面にあらたに下地を取る場合や下地と仕上げの食いつきが求められる場合に採用されます。
・金鏝均し
金鏝一回押さえや防水下均しとも呼ばれ、トンボで均したあと金鏝を使用して平滑に仕上げます。
防水層の下や、内部のレベリングモルタル部分で採用されます。
・金鏝仕上げ
コンクリートの素地がそのまま仕上げになる場合や塗装仕上げの場合に採用されます。
生コンクリート表面を均した後、金鏝を使用して表面が平滑になる様に2度仕上げます。
コンクリート打設時に注意するポイント
次にコンクリート打設時に注意するべき管理ポイントを紹介します。
打ち込み
コンクリートは打設量によって型枠にかかる圧力が増えていきます、一か所に打設する要は計画した高さや数量を超えないように注意します。
打ち込み金物の位置ずれが起きないように、打設前後で確認を実施します。
生コンクリートの締固め
型枠内に生コンクリートを打ち込み(流し込み)後、型枠内に生コンクリートを隙間の無いように充填させます。
生コンクリートの締固めで多く採用される方法として、型枠内の生コンクリートに振動棒を挿入して充填する工法を採用します。
コンクリートの側面の最終仕上げが、コンクリート打ち放し仕上げの場合には仕上げ面が傷つかないように慎重に締固めを行う必要があります。
コンクリート打ち放し仕上げの場合には、鉄筋の内部への振動棒を入れて外部を木づちで叩くか、型枠振動機を使用して充填します。
型枠を傷つけないようにするために、内部に竹を挿入して充填させる古来の方法などもあります。手間はかかりますが仕上げ面がきれいになるので検討の価値ありです。
適切な養生の実施
・コンクリート露出部の養生
コンクリートは急激に乾燥させたり、固まる前に衝撃をあたえると硬化不良やひび割れが発生してしまいます。
床面などのコンクリートが露出している部分に湿潤養生を行います、散水やシートによる養生が一般的です。
打設仕上げ時に薬剤を散布して湿潤養生かわりになる工法を採用すると散水手間を省けるのでオススメです。
・型枠部分の養生
透水性の低い型枠による湿潤養生を終えて脱型する時期は、日数管理か強度管理によって決定します。
日数による管理
生コンクリートに配合したセメントの種類と、建物の計画供用期間の等級によって湿潤養生を行うべき日数が設定されています。
打設後に設定されている日数の湿潤養生を経過後に型枠等を脱型することが出来ます。
計画供用期間の級 | 短期及び標準 | 長期及び超長期 |
急強ポルトランドセメント | 3日以上 | 5日以上 |
普通ポルトランドセメント | 5日以上 | 7日以上 |
その他のセメント | 7日以上 | 10日以上 |
圧縮試験強度による管理
計画供用期間の級によって圧縮強度の基準が設定されています。
短期及び標準の場合10N/㎟以上、長期及び超長期の場合15N/㎟以上の強度が発現していることを確認します。
コンクリート打設工事概要のまとめ
今回は躯体工事における生コンクリート打設作業の概要や管理方法について解説しました。
今回のポイントは
1.コンクリート打設とは
2.コンクリート打設の手順
3.コンクリート打設時に注意するポイント
コンクリートの品質は建物の強度に直接的に影響します。
良い建物を構築するために、しっかり準備して適切な施工管理を行いましょう!
今回の記事で扱った数値の根拠や、品質基準を詳しく知りたい場合は「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5」や「公共建築工事標準仕様書 建築工事編」を参照することをおすすめします。
いずれも工事を監理するための仕様書として多くの建築工事で採用されています。
今回は以上です、ではまた!
コメント