今回は鉄筋コンクリート造(以下RC造)で行う鉄筋工事について、実際に現場で管理するべき数値を確認していきます。
なぜ鉄筋工事は数値で管理しなくてはならないのか?
鉄筋はRC造建物の強度に大きく影響する材料であり、適切な数値管理が求められる工事です。
コンクリートを打設してからは内部の鉄筋状態を確認することができない、といった特徴もあることから、施工時には求められた品質通りに配筋していることを記録する必要があります。
この品質記録を残していないと、一部破壊して鉄筋状態を確認しなければならなかったり、そもそも適切に配筋されていない場合には完全に壊して作り直しになります。
作業前に事前に必要な情報を確認してしっかり準備をしてきましょう!
鉄筋工事の流れについては別記事にまとめています、合わせて確認してください!
この記事でわかること
1.鉄筋工事で確認するべき項目
2.鉄筋工事を行う上で確認するべき数値
順番に確認していきましょう!
鉄筋の種類
まずは鉄筋の種類について確認です、建設現場で使用する鉄筋はSR(丸鋼)とSD(異形棒鋼)の2種類があります。
SD(異形棒鋼)はSR(丸鋼)の表面に節とリブを付けて、鉄筋材とコンクリートの付着力を増大させた材料です。
現在は躯体強度を確保するために、主にSD(異形棒鋼)が使用されています。設計図面上で鉄筋の種類はSD295AやSD345などと表記され、この数値は鉄筋の降伏点で295N/㎟以上保証されていることを示しています。
施工管理項目しては、必要な箇所に必要な強度をもつ鉄筋を配筋した記録を残す必要があります。
鉄筋の種別確認
鉄筋には鋼種・規格をを示すものが複数あります。
1.鉄筋には鉄筋を製造する過程で1本ずつに識別記号(圧延マーク)が刻印されています
2.束ねられた鉄筋にはメタルタグと呼ばれる鉄筋の情報が載った金属プレートがつけられています
3.メタルタグに記載された識別色と同様の色を、鉄筋束の断面に塗ることがあります
現場の搬入した時にはこれらの識別要素を確認して、品質記録に残します。
種類の記号 | 圧延マークによる表示 | 識別塗色による表示 |
SD295A | 圧延マークなし | 適用しない |
SD295B | 数字の1またはⅠ | 白 |
SD345 | 突起の数が1個(・) | 黄 |
SD390 | 突起の数が2個(・・) | 緑 |
SD490 | 突起の数が3個(・・・) | 青 |
品質書類には、現場での材料検収記録、メタルタグ、鋼材検査証明書(ミルシート)を添付します。
記録忘れや資料の紛失の無いように管理しましょう。
鉄筋相互の間隔寸法・あき寸法の確保
配筋時に鉄筋が相互に適切な間隔・あき寸法が確保されていることを確認します。
間隔寸法
間隔はピッチと呼ばれ、@200や@100などと図面に配筋しようとして記載されています。
@200であれば200mm以内毎に配筋しなさい、という指示です。
あき寸法
あき寸法とは配筋した時にできる鉄筋と鉄筋の間の寸法を呼びます。
あき寸法はつぎのうち一番大きい値とします。
なぜ鉄筋のあき寸法を確保しなければいけないのか
鉄筋相互のあき寸法が確保されていないと、生コンクリートを打設したさいに骨材が通過できずに分離してしまったり、しっかりと充填されずに空隙が発生するおそれがあります。
配筋検査時には鉄筋の間隔(ピッチ)のほかに、あき寸法が確保されていることを必ず確認しましょう!
鉄筋の継手とは?
鉄筋は配筋するときに作業性や、建物の大きさに応じて適切にカットして現場に搬入されます。
コンクリート内部で鉄筋を連続させるために、継手と呼ばれる接合をします。
鉄筋はコンクリートの中で主に引っ張り力を負担する重要な部材です、継手は鉄筋の強度を十分に持たせる必要があります、それぞれの継手で必要な管理数値を確認して記録していきましょう。
鉄筋の重ね継手の長さ
代表的な継手として鉄筋と鉄筋を一定長さ直接重ねる「重ね継手」について確認していきましょう。
鉄筋を重ねる長さは、鉄筋の先端形状と打設するコンクリートの設計基準強度によって決まります。
コンクリートの 設計基準強度 (N/㎟) | SD295A | SD345 | SD390 |
18 | 45d(35d) | 50d(35d) | – |
21 | 40d(30d) | 45d(30d) | 50d(35d) |
24~27 | 35d(25d) | 40d(30d) | 45d(35d) |
30~36 | 35d(25d) | 35d(25d) | 40d(30d) |
表の( )内は鉄筋を先端フック付きに加工した場合の重ね継手長さL1hです、重ね継手長さは鉄筋の曲げ開始距離から計測します。
直径の異なる鉄筋を重ね継手する場合の重ね長さは、細いほうのdによります。
鉄筋の折り曲げ加工の内法径
つぎに、鉄筋の折り曲げ加工を行う場合の規定を確認します。
ここでのポイントです!
1.折り曲げ角度によって折り曲げ後に必要な余長が異なります
2.使用する鉄筋の径(d)が大きいほど、鉄筋の折り曲げ内法直径も大きくなります
鉄筋の種類 | 鉄筋の径による区分 | 折り曲げ内法直径 |
SD295A | D16以下 | 3d以上 |
SD345 | D19~D41 | 4d以上 |
SD390 | D19~D41 | 5d以上 |
鉄筋のかぶり厚さの規定とは?
かぶり厚さとは、コンクリートの表面から内部の鉄筋表面までの最短距離のことです。
このかぶり厚さの数値は、躯体の耐久性や耐火性など構造体力を考慮して規定されています。
配筋時には型枠から鉄筋までの最短距離がこの数値を確保できていることを確認します。
部材の種類 | 級:短期 屋内・屋外 | 級:標準・長期 屋内 | 級:標準・長期 屋外 | |
構造部材 | 柱・梁・耐力壁 | 40 | 40 | 50 |
構造部材 | スラブ | 30 | 30 | 40 |
非構造部材 | 30 | 30 | 40 | |
直接土に接する部材 | 基礎以外 | 50 | 50 | 50 |
直接土に接する部材 | 基礎 | 70 | 70 | 70 |
表の縦列は、設計で定められている計画供用期間の級によって確認する場所がことなります。
下の図1のように設計図に計画供用期間の級が記載されています、この図では短期の部分の□が塗られて■になっています。
記載方法は■であったり◎であったり設計事務所さんの書き方によりますので、実際に携わっている工事現場の設計図(構造)を確認してみください。
基準法で定められて最小かぶり厚さは、表に記載した設計かぶり厚さから―10㎜した数値ですが、現場では基本的に設計かぶり厚さで管理します。
まとめ:鉄筋工事で管理する規格や数値について
今回は鉄筋工事をおこなう時に管理すべき数値について確認してきました。
複数紹介しましたが、あくまでもこれは一般的な事項です。
現場によって特記仕様書に記載された内容で管理することが前提になるので、この記事では鉄筋工事管理では「こういった項目のこんな数値を管理するのだな」と覚えてください。
実際に管理する物件では、設計図から管理数値を読み取ることを忘れずに行ってください!
鉄筋工事を管理する上での根拠や管理基準の詳細を確認したい場合には、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事」の参照がおすすめです!
今回は以上です、ではまた!
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