今回は、地下構造物を作るための仮設工事である山留工事について解説していきます
山留工事は、安全に工事を行うために掘削面を保護し、作業スペースを確保するために行う作業です、地下工事を行うために地盤を掘削すると、掘削面が崩壊する恐れがあります。
安全に工事を行うためには事前の準備が大切であり、重要な作業です
この記事で分かること
1.山留め工事の工事概要
2.山留の工法の基本的に知識
山留工事は仮設的な要素が多く、そのため施工者が計画し施工することが多いといった特徴があります
施工管理者としては他の工事と比べると自由度も責任も多い工事です
安全性とコスト考慮した計画と、適切な施工管理を行うための知識を学習していきましょう!
山留め工事の工事概要
まずは山留工事の基本的な概要を確認していきましょう!
工事の時期
仮囲いなどの準備工事が終了した後に始まる工事で、全体としては序盤に行う工事です
工程表上のオレンジ色で示したあたり、杭工事の前に実施します↓
工事の概要
建築物を建設する工程で、地下構造物を作るため地盤の掘削を行います
地盤の掘削によって周辺の地盤が崩れないように、仮設の壁(山留め壁)を構築したり
山留め壁を支える支保工を設置する工事が山留工事です
山留工事の特徴
土や水など自然によってつくられた不確定要素の多いものを扱うため、しっかりとした事前の調査と施工計画が必要となる工事です
山留工事は(一部の工法を除いて)仮設工事です、山留めに使用される材用は比較的高価なため、地下躯体工事が終えたら引き抜くなどの方法で撤去し、返却または売却処分します
地盤面に重機を設置して、山留親杭を打ち込んだり山留壁を構築するため、山留め壁を構築する際は地表面以下を目視出来ない状態で施工します
山留め壁だけでは自立できない場合には、山留め支保工を設置して山留め壁が倒れてこないように補助させます、山留め支保工は掘削を進めながら順番に設置していきます
山留め工事の工法について解説
山留工事の流れと工法について確認してきましょう
山留め工事の流れを確認
- 山留め壁を構築する
- 掘削しながら山留め支保工を構築する
- 地下躯体を構築し、山留め支保工を解体する
工法の確認
工法の選定は、掘削(根切り)と山留めでセットで考えることが重要です
掘削工法(根切り工法)について
一般的にオープンカット工法が多く採用されます、掘削時に天井がオープン(空が見える)な工法です
オープンカット工法は、まとめて掘削する総掘りと分けて掘削する部分掘削工法があります
山留め壁を設けずに掘削する工法と、山留め壁を設けて掘削する工法から選択されます
種類や関係性はこちらです↓
山留め壁を構築する
山留め壁を構築する際は、地表面より深い部分は目視出来ない状態で施工します
精度よく確実に壁を構築することが重要です
山留め壁の主な工法
山留め壁は止水性のある止水壁と、止水性のないと透水壁があります
掘削深さ、地下水の有無や水位、土質、掘削周囲の建築物や埋設物などの条件を考慮して、安全性や経済的な観点から最適な山留め壁の種類を選定します
山留め壁の分類
透水壁
山留め壁に止水性はないが、施工性が良く比較的安価に施工できる工法です
・親杭横矢板工法
H形鋼などの親杭と、木製の矢板(やいた)で構築する工法です
掘削前にオーガ―で削孔しH形鋼を芯材(親杭)として打ち込み、掘削しながら親杭と親杭の間に木製の板(横矢板)を順番にはめ込むことで山留め壁を構築します
止水性ありませんが、費用は比較的安価で構築できます
地下水位が引くく、掘削底から水が出ない敷地に適しています
止水壁
山留め壁に止水性がある工法です、地下水位が高い場合に採用されます
・シートパイル(鋼矢板)工法
鋼製の板を打ち込む工法です
互いにかみ合う形になっている鋼製板によって止水性を持たせた山留壁です
材料が比較的高価なため、地下工事完了後に引き抜き回収するのが一般的です
地下水位が高い地盤で、比較的浅い掘削に適しています
・ソイルセメント柱列壁工法
土とセメントミルクを攪拌(かくはん)して、止水性のあるソイルセメント壁を構築する工法です
壁に剛性を持たせるために、芯材としてH型鋼を挿入します
地下水のある地盤で、比較的深い掘削に適している工法です
・鉄筋コンクリート地中連続壁工法
地中に鉄筋コンクリート製の壁を構築する工法です
この山留め壁は、仮設としての役割だけでなく地下躯体として使用されるケースもあります
工事費用は高価ではあるが、山留め壁として安全性が高い為、周辺に構造物があり大深度掘削時に採用されます
既存躯体を利用する工法
既存の建物がある場合、その地下外壁を部分的に解体せずに山留め壁として利用する工法です
新設の山留め壁の構築を省くとこができるため、コストや工期面でのメリットがあります
山留め壁を保持するための支保工は必要となることが多い工法です
山留め支保工を構築する
支保工の施工は、掘削しながら順番に設置する作業です
山留め壁の変位や掘削地盤、周辺地盤の沈下、地下水などの状態を観測しながら施工することが重要です
山留め支保工の工法を選定する基準
山留め支保工は、掘削深さ、掘削面積・形状、敷地の高低差、土質、地下工事の手順、周辺地盤などにより、最適なものを選定します
総堀り工法
切梁工法
一般的によく使われる工法で、山留め壁を鋼製の腹起し・水平切梁・火打ちで支える工法です。比較的深い掘削で、周辺に余裕がない敷地や高低差が少ない敷地で採用されます。
自立掘削工法
山留め壁の根入れ部分の強度を頼りに、支保工無しで掘削する工法です
浅い掘削で、周辺に余裕がない敷地で採用されます
地盤アンカー工法
掘削背面(外側)に地盤アンカーを打ち込むことで山留め壁を支える工法です
掘削場所に水平切梁などの仮設物がないため、地下工事がしやすいといった特徴があります、地盤アンカーが山留め壁より外側に設置されるため敷地条件に制約されます。
敷地の面積に制約が多い建築工事より土木工事で採用されることが多い工法です。
法付けオープンカット工法
法面(斜めの掘削面)を形成しながら掘削する工法で、山留め壁を構築する必要がないが、地下躯体工事後に埋め戻しが必要です。
掘削周辺の敷地に余裕があり、地盤が比較的堅固な場合に採用されます
山留壁・支保工を採用しないので安価な工法です
部分掘削工法
部分掘削アイランド工法
敷地中央部を掘削し、中央部に構造物を施工した後に外周部を掘削して、中央部の構造体に斜め切梁を設置して山留め壁を支えてから、外周部を掘削する工法です。
広い面積の掘削が必要な工事に採用され、施工が2段階となるため工期が長くかかります。
トレンチカット工法
アイランド工法とは逆に、外周部から掘削して構造体を構築します
外周部の構造体に土圧を負担させてから、内部の工事を行う工法です
こちらも広い面積の掘削が必要な工事で採用されます。
逆打ち工法
山留め壁設置後、1階の床や梁を構築して山留め壁への支保工とする工法です
下階の掘削と躯体施工を繰り返して進めます、通常とは逆の手順のため逆打ち工法と呼ばれます
下への工事と並行して上部構造も構築できるといったメリットがあります
山留め支保工を解体する
地下躯体工事を構築後、埋め戻しに合わせて順番に山留支保工を解体していきます
山留壁の強度と埋め戻しによる土圧負担を事前に計算し、きちんと管理しながら作業をすすめます
地下躯体の構築が終わったら躯体周囲の埋め戻しを行い、支保工の一部を解体します
その後、地下躯体の上部を構築し、支保工の解体のサイクルを繰り返し行います
支保工を解体しても山留め壁が倒れたり、崩れたりしないように品質管理を行うことが大切です、安全性の確認を確実におこないましょう!
まとめ
山留め工事は、地下構造物を作るための仮設工事です
山留め壁を構築する工法・山留支保工を構築する工法は複数あります
工事を行う敷地の地盤状況に応じて適切な工法を選定して、安全に作業を進めましょう
以上です!ではまた!
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