今回は若手現場監督に向けて、建物の重量を地盤付近で支える基礎躯体工事についての工事の流れを中心に解説を行います。
この記事では基礎工事の全体像を把握することを目的に構築しています。
この記事で分かること
各工事の詳細は個別記事にまとめています、合わせて読みたい記事リンクから確認してみてください!
順番に確認していきましょう!
基礎躯体工事の流れ
建物の重量を地盤に伝える重要な構造体である「基礎躯体」を構築するための工事全体の流れを確認してきましょう!
今回は仮設等の準備工事が完了したあとの工程として、敷地が更地である状態から確認していきます。
山留壁構築
地盤を掘削することによって周辺地盤が沈下したり、掘削面が崩壊しないように掘削作業に先行して山留壁を構築していきます。
山留壁の構築は地盤面から重機を使用して掘削し、構築するため位置が正確であること・垂直であることをしっかりと管理する必要があります。
採用されることの多い山留壁は、親杭横矢板、シートパイル、ソイルセメント柱列壁工法です、地盤状況に応じて選択し施工します。
杭打ち
山留壁の構築が終わったら次に杭工事を行います。
ある程度の規模の建物では杭の支持力によって建物を支える工法を採用することが多いです。
杭は既成杭・場所打ちコンクリート杭・地盤改良などの種類から適切な支持力が確保できるものをコストや現場の施工性なども考慮して選択されます。
杭基礎の種類の中でも既成コンクリート杭が採用されることが多くなっています、理由としては各メーカーさんが高支持力を出せる製品や工法を開発してきているからですね。
場所打ち杭は高支持力が出せる反面、工期や費用がかかるといったデメリットがあります。
プレボーリング工法 既成コンクリート杭材料
掘削作業
杭工事の次に行う作業は、地下構造物である基礎を構築するために、地盤を掘削する土工事(掘削工事)を行います。
掘削はバックホウで行うことが多いです、現場規模が大きく掘削深さがある場合にはクラムシェルと呼ばれるクレーンの先端にバケットのついた重機を採用することがあります。
掘削作業時は、山留め壁や周辺地盤の変位に注意しながら進めていきます。
掘削部への雨水の流入や湧き水によって工事が滞らないように排水も並行して行えるように準備しておきましょう。
バックホウとダンプカー 掘削用の爪
山留支保工設置
所定の深さまで掘削した段階で、横矢板を設置したり山留支保工の設置を行います。
掘削が進むと山留壁に土圧がかかり始めるため、日々の計測をおこなって変位が起きていないか確認します。
計測・管理方法は、ピアノ線を張ってスケールで数値を測る、トランシットや光波測量機で計測する、下げ振りを使用するなど様々です、作業所で話し合って適切なものを採用してください。
大型現場では下の画像のように、複数段の腹起し・切梁支保工を設置することもあります。
支柱や支保工が地下構造体と干渉しないように計画し、手順を守って安全に作業することが大切です。
切梁支保工 切梁支保工
掘削・地業
掘削を進めつつ、支保工を設置することを繰り返し、所定の深さまで掘削することが出来たら地業をおこないます。
おおまかには、掘削面を平らにする(床付け)、砕石を敷き込み、捨てコンを打設するまでの作業が該当します。
床付けはバックホウで丁寧におこないますが、掘削に使用するバケットの爪の形状を変えて平らに仕上げていきます、掘削時は爪がとがった状態、床付け時は平らな爪に取りかえてから作業します。
砕石敷き 床付け用の爪
捨てコンクリート打設
捨てコンクリートは、基礎配筋や型枠を立て込むための受けになる下地として厚さ50㎜~100㎜で構築します。
捨てコンクリートは基礎を構築するために設置するものなので構造体ではありません。
基礎位置の基準となる線をしるしたり、鉄筋をのせたりするため平滑であること、ある程度の強度が必要です、コンクリート強度は設計図に記載されているので確認してください。
アンカーフレーム設置
上部の躯体が鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造の場合には、最初にアンカーフレームを設置します。
アンカーフレームは鉄骨柱を基礎へ定着させるアンカーボルトの位置を保持する目的で設置します。
出典:株式会社近藤商会 公式HP 出典:大津鉄工株式会社 公式HP
地足場設置
基礎工事を進めていくとそれぞれのスパンへ移動することが難しくなってきます。
そのため、本格的に基礎工事始まる前に仮設の通路を構築します。
メインの通路を設置して、そこから各スパンへ移動できるように枝分かれさせて通路を設置するイメージです。
基礎配筋
まずは鉄筋コンクリート構造体の骨となる鉄筋を組み立てていきます。
型枠建て込み
基礎の鉄筋の配筋作業を終えたら、次にコンクリートの形を保持するための型枠を構築します。
組み立てた型枠に生コンクリートを流し込み、硬化して強度が出るまで形を保持すること、生コンクリートが漏れ出さないように保持させることが求められます。
使用材料は一般的にコンクリート用ベニヤが多く、戸建て住宅などでは鋼製枠などもよく使用されます。
コンクリート打設
鉄筋工事・型枠工事を終えたら、いよいよ基礎コンクリートの打設を行います。
※用語(打設:型枠にコンクリートの流し込むことを打設すると呼びます)
設計時に設定された強度のコンクリートを生コン車でプラントから工事現場へ運搬、コンクリートポンプ車などを使用して打設し、高周波振動棒でしっかりと型枠の隅まで充填してく作業を行います。
型枠解体
コンクリート打設後、所定の養生期間をおいて硬化したことを確認したら、型枠を解体します。
基礎は断面が大きいことから解体時に温度がまだ高いことがあります、夏場は作業員さんの熱中症に十分な注意が必要です。
地足場解体
型枠の解体を終えたら通路として使用していた地足場を撤去していきます。
ここでの注意ポイントは、通路を撤去してしまうと各スパンへの通行が難しくなるため、はしごや親綱などの設備を用意しておくことです。
埋め戻し
基礎構造体の周りを土砂などで埋め戻していく作業です、掘削と同様にバックホウを使用して行います。
埋め戻しのルールとして、深さ30cm毎に転圧することが決まっています。
躯体の側面に30cmのしるしをするか、既製品のテープなどであとから写真でみたときにも分かる様にしておきます。
出典:株式会社ランドアート 公式HP
山留支保工・山留壁の解体
所定の深さまで埋め戻したら、山留支保工を順番に解体してき、また埋め戻しを行うといった作業を繰り返していきます。
地盤面まで埋め戻しが完了したら、山留壁を撤去します。
親杭横矢板では親杭となるH鋼を、シートパイルではシートパイルそのものを重機をしようして引き抜いていきます。
引き抜き後の孔には砂やモルタルを充填して沈下しないような対応をします。
土間(スラブ)の構築
埋め戻しが完了したら、次に1階の床である土間や床スラブを構築します。
基本的に床下が埋め戻されている場合には土間、下が空洞で配管ピットなどになっている場合にはスラブとされていることが多いです。
が、建物の構造上埋め戻しでも基礎と一体として構造上必要な部位として床をせっていすることもあるので、よく図面をみて、よく打ち合わせをして工事を進めてください。
基礎工事全体の流れを確認:まとめ
今回は基礎工事全体の流れを確認しました。
工事の全体の流れが把握できたのでしょうか、各工事の詳しい内容はそれぞれの個別に記事にしてあります、ぜひ見てください!
今回紹介した躯体工事で扱った数値の根拠や、品質基準を詳しく知りたい場合は「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5」を参照することをおすすめします。
今回は以上です、ではまた!
コメント