土工事の完全ガイド：3. 仮設工事と安全管理編

施工現場における安全管理と環境配慮は、プロジェクトの成功に欠かせない要素です。 仮設工事は、作業員の安全確保をはじめ、現場全体の効率的な進行を支える基盤です。

また、振動や騒音が発生する工事では、周辺環境や住民への影響を最小限に抑えることが求められます。本記事では、仮設工事のリスク管理と振動・騒音対策を中心に、現場での安全性を確保しつつ、環境保護にも配慮した施工方法を学ぶことができます。

本パートも安全と環境の両立を目指す施工管理者にとって必見の内容です！

「本記事は、土工事に関するシリーズの一部です。このシリーズでは、施工管理者が知っておくべき基礎知識から掘削作業、土質・地盤調査、排水対策、コスト管理まで、土工事に関する重要なポイントを徹底解説しています。詳しい内容や他のステップについては、ぜひ他の関連記事もご覧ください。」

まとめ記事はこちら↓

この記事でわかること

6. 仮設工事と安全管理：現場でのリスクを最小限に抑えるには？
7. 振動と騒音対策：環境への配慮を忘れずに

6. 仮設工事と安全管理：現場でのリスクを最小限に抑えるには？

仮設工事は、建設現場での安全性と効率性を確保するための重要な工程です。足場や支保工、仮囲いといった仮設設備が適切に設置されていないと、現場での事故やトラブルが発生するリスクが高まります。

安全で安定した作業環境を提供するために、施工管理者は仮設工事の計画と管理を徹底する必要があります。この記事では、仮設工事の役割と重要性、リスクを最小限に抑えるための具体的な対策について解説します。

6.1 仮設工事の役割と重要性

仮設工事は、建設プロジェクト全体を円滑に進めるための一時的な設備や構造物を設置する工程です。仮設足場、仮囲い、支保工、仮設電源など、工事を支える多くの仮設設備は、安全で効率的な施工を実現するために欠かせません。

これらの設備が適切に設置されていない場合、作業効率が低下し、作業員の安全が脅かされる可能性があります。

施工管理者は、仮設工事の重要性を十分に理解し、計画と設置を適切に行うことで、安全性と効率性を最大化することが求められます。

仮設工事の主な役割

作業員の安全確保
仮設工事の最も重要な目的は、作業員の安全を確保することです。高所作業や掘削作業では、足場や支保工の設置が不安定だと、転落や崩壊のリスクが高まります。これらのリスクを回避するために、足場の設置や転落防止策、支保工の強化が不可欠です。安全な作業環境が提供されることで、労働災害を防ぎ、作業の信頼性が高まります。
施工の効率化
仮設工事は、作業効率の向上にも寄与します。仮囲いによる現場の保護や、仮設トイレや仮設電源の配置は、作業員の利便性を向上させ、作業が中断なく進行することをサポートします。さらに、足場や構台を適切に設置することで、効率的に高所や掘削作業が行えるようになり、施工全体のスピードと品質が向上します。
周辺環境への配慮
仮設工事は、周辺環境や住民への影響を最小限に抑えるためにも重要です。工事現場を仮囲いで覆うことで、工事中の粉じんや騒音の拡散を防ぎ、周辺住民の生活環境への影響を抑えます。また、仮設のバリケードや標識の設置により、工事区域内への不正侵入を防ぎ、周囲の安全も確保します。

6.2 仮設足場の設置と安全対策

仮設足場は、高所作業や掘削作業を行う際に不可欠な設備です。土工事では、地足場や構台などの特定の仮設足場がよく使用されます。

これらの足場は、現場の地盤や作業内容に応じて設置され、設置が不十分だと転落事故や構造物の崩壊リスクが高まるため、正確な設置が求められます。

6.2.1 地足場の設置方法と安全対策

地足場（地上足場）は、地面に直接設置される仮設足場で、掘削や盛土、埋戻しなど、比較的低い高さで行われる作業に適しています。地足場はシンプルな構造ですが、適切な設置と安全対策が欠かせません。

設置前の地盤確認と整地: 設置場所の地盤が安定しているかを確認し、柔らかい地盤や不整地では整地を行い、足場をしっかり固定できる状態にします。
足場の固定とバランス確認: 足場の設置時には水平器を使ってバランスを確認し、必要に応じて補強材を使用して転倒リスクを防ぎます。
安全柵や手すりの設置: 作業員の転落を防ぐため、足場には手すりや安全ネットを設置し、特に勾配がある現場では転落防止策が必須です。

6.2.2 構台の設置方法と安全対策

構台（こうだい）は、掘削作業や地盤工事で使用される仮設の作業台です。深い掘削現場や大型構造物の建設で多用され、強度と安定性が必要です。

設計図に基づく設置計画: 掘削作業の深さや周辺の地形に応じて、作業台の高さや位置を正確に計画します。
支柱の強度確認: 支柱が地盤にしっかり固定され、作業床が水平に保たれるように調整します。
作業床の安全確保: 作業床の上で作業を行う際は、安全ネットや手すりの設置が必要です。また、階段やはしごも安全に配置します。

6.2.3 安全対策の徹底

仮設足場や構台の設置が終わった後も、定期的な点検とメンテナンスが必要です。特に、作業中の地盤の変化や天候条件によって仮設物の安定性が影響を受ける可能性があるため、以下の対策が重要です。

定期点検の実施: 設置後も定期的に支柱や接合部のゆるみを点検し、不具合があれば修正します。
作業員の安全教育: 仮設足場や構台の使用に際しては、作業員に対する安全教育を実施し、リスクのある作業について理解させることが必要です。
使用制限の管理: 強風や大雨などの天候条件によって使用制限を設けることで、安全に作業が進行します。

6.3 支保工の設置とその役割

支保工は、特に深い掘削作業で使用される仮設設備であり、掘削面の土圧や水圧に耐え、掘削壁の崩壊を防止する役割を担います。

特に、山留支保工は深い掘削現場での安全確保に不可欠です。

支保工が必要な場面

深い掘削作業: 掘削深度が1.5メートル以上の場合や、軟弱地盤では支保工が設置され、掘削壁の崩壊を防ぐために山留支保工が使用されます。
地下構造物やトンネル工事: 土圧や水圧を防ぐために、鋼矢板や親杭・横矢板工法が使用されます。

支保工の設置方法

支保工の設置は、設計図や現場の状況に基づいて慎重に行われる必要があります。土圧や水圧、作業中の振動に耐えるよう設計され、以下の手順で設置します。

現場の調査と設計: 現場の地盤状態や掘削深さを調査し、土圧や水圧に耐える支保工を設計します。
支柱の設置と固定: 支柱を掘削面に沿って設置し、しっかりと固定します。
横矢板や土留壁の設置: 親杭の間に横矢板や土留壁を設置し、掘削面を完全に支えることで崩壊を防ぎます。

支保工の安全管理

支保工は設置後も定期的な点検が必要です。天候や地震などの影響を受けやすいため、定期的な補強や点検を行い、作業員の安全を確保します。

定期点検の実施: 支保工が設置された後も、支柱や接合部のゆるみを定期的に点検し、変形や劣化がないか確認します。
天候や地震後の再確認: 大雨や地震などの自然現象が発生した後は、支保工の状態を再確認し、追加の補強が必要かどうか判断します。
作業員への安全教育: 支保工の設置や点検を行う作業員には、適切な教育と訓練を実施し、事故防止に努めます。

小まとめ

仮設工事と支保工は、現場での安全性と作業の効率性を確保するために欠かせない要素です。 足場や支保工の設置が適切に行われることで、作業員の安全が確保され、施工がスムーズに進行します。

定期的な点検と補強を通じて、長期的な安全と効率性を保ちましょう。

7. 振動と騒音対策：環境への配慮を忘れずに

振動と騒音は、建設工事において避けられない要素ですが、これらが周辺住民や環境に与える影響は大きく、対策が必要です。特に都市部や住宅地では、騒音や振動が原因で住民からのクレームや工事停止に至ることもあります。

また、振動や騒音を伴う特定の工事では「特定建設作業実施届出書」の提出が義務付けられているため、法令を遵守しつつ、周囲への配慮を欠かさないことが重要です。この記事では、施工現場での振動と騒音を抑え、環境への影響を最小限にする具体的な対策を解説します。

7.1 振動と騒音がもたらす影響

建設現場では、掘削機や重機、杭打ち機などが大きな振動や騒音を発生させます。これらの影響は、周辺住民や建物、さらには自然環境にまで広がり、特に周辺住民への配慮が重要です。

住民への影響
騒音や振動が発生することで、住民の生活に支障をきたし、騒音によるストレスや睡眠障害を引き起こします。具体的には、85dB以上の騒音（例：車の通行音や大声での会話）が継続する場合、住民からのクレームが増加する可能性が高くなります。
建物やインフラへの影響
振動は、特に古い建物やインフラに対してひび割れや損傷を引き起こす恐れがあります。例えば、75dBの振動は一般住宅においても不快感を与え、場合によっては建物の基礎に影響を与えることがあります。
環境への影響
騒音と振動は、自然環境や動物にも悪影響を及ぼすことがあります。特に、保護地域や自然公園の近くでの工事では、環境保護の観点からも配慮が必要です。

7.2 振動と騒音の発生源

施工現場での振動と騒音の主な原因として、以下のものが挙げられます。

重機の稼働: 掘削機やブルドーザーは、大きな騒音（85dB以上）と振動を発生させます。
杭打ち作業: 杭打ち作業は、特に騒音と強い振動を伴い、周囲に大きな影響を及ぼします。
交通と搬入: トラックや重機の出入りも、70～80dBの騒音を発生させます。

7.3 振動と騒音を抑えるための具体的な対策

振動や騒音を完全に防ぐことは難しいものの、対策を講じて影響を抑えることができます。以下に、現場での具体的な対策を紹介します。

1. 振動を抑える対策

低振動機械の使用
振動を抑えるために、低振動型の重機や機械を使用することで、周辺への影響を軽減できます。例えば、杭打ち工法の圧入工法は従来の打ち込み式に比べ、振動が少ない工法です。
作業時間の調整
住民の生活時間帯を考慮して、振動や騒音が発生しやすい作業は、早朝や深夜を避けて行います。工事現場近くの住民の方とは事前に工事時間についての協議を行い、トラブル低減に努めましょう。
防振装置の導入
防振マットや振動吸収材を使い、振動を周囲に広げにくくすることも有効です。特に、振動を伴う作業が続く現場では、防振対策が不可欠です。

2. 騒音を抑える対策

防音壁の設置
防音壁を設置することで、騒音を物理的に遮断し、周辺への音の拡散を防ぎます。特に、都市部や住宅地に近い現場では、この対策が効果的です。
低騒音機械の使用
騒音を低減するために、低騒音エンジンや装置を使用します。これにより、作業現場での音量を大幅に抑えることができます。
機械の定期メンテナンス
古い機械や不具合のある機械は、通常よりも大きな騒音を発生させることがあるため、定期的なメンテナンスを実施して騒音を抑えます。

7.4 住民や周辺環境への配慮

事前の周知は、トラブル回避のために非常に重要です。工事開始前に周辺住民に作業時間や内容を周知することで、理解を得やすくなります。

また、騒音や振動が発生する場合は、相談窓口を設け、対応体制を整備することが望まれます。平時は作業所事務所や担当部署電話としておき、営業時間外は作業所長や営業マンの携帯へ転送されるように設定しておきましょう・

7.5 振動と騒音のモニタリング

振動や騒音の測定には、専用の測定機器を使用します。 現場でのリアルタイム監視により、基準値を超えた場合には即座に対応できるため、事前にトラブルを回避できます。

騒音測定計: 騒音計（例：日本精密測器株式会社の「NL-52」）を使用し、現場周辺の騒音レベルを測定します。この機器は、騒音レベルをリアルタイムで表示し、データを記録することができます。
振動測定計: 振動計（例：リオン株式会社の「VM-83」）を使って、振動レベルを測定します。これにより、振動の大きさや継続時間を記録し、基準を超えた場合にすぐに対策を講じることができます。

モニタリングシステムの導入により、基準値を超えた場合には即座に作業を中断し、適切な措置を取ることが可能です。