「アスベスト含有パッキンの撤去方法を知っていますか?」
解体工事に携わる技術者や現場監督の皆さん、現場での安全対策は万全でしょうか? 特に、アスベスト(石綿)含有建材を扱う際は、リスク管理と適切な手順が不可欠です。
事前調査でアスベスト含有パッキンが発見された場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?
本記事では、解体工事前の事前調査の重要性や、必要な資格、そして安全に作業を進めるための具体的な撤去手順について詳しく解説します。
若手技術者や現場監督として押さえておくべきポイントをまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください!
アスベストのリスクを理解し、正しい対応を取ることで、現場の安全を確保してトラブルを未然に防ぎましょう!
1. 解体工事前の事前調査
解体工事を行う前には、必ず建築物や設備にアスベスト含有建材が使用されていないかを確認する「事前調査」が必要です。
この調査は、石綿障害予防規則に基づき、法的に義務付けられています。
(リンク先:厚生労働省)
事前調査の内容
既存建物や設備にアスベストを含む建材(パッキン、ガスケット、断熱材など)が使用されているか確認します。
調査結果に基づき、どの箇所でアスベストが使用されているか、含有量はどの程度かを明確にします。
調査の実施者の資格
事前調査は「石綿含有建材調査者」または「建築物石綿含有建材調査者」の資格を持つ者が行わなければなりません。
これらの資格は、一定の講習を受講し、試験に合格することで取得できます。
2. アスベスト含有が確認された場合の対応
アスベスト含有が確認された場合、その撤去作業は厳重な管理のもとで行われる必要があります。
作業者が必要とする資格
アスベスト含有建材の撤去作業を行う作業者には、「石綿作業主任者」または「特別教育(アスベスト取扱作業従事者特別教育)」の資格が必要です。
この資格は、石綿作業に関する知識を有することを証明し、作業現場において作業計画の確認、作業の管理、作業者の健康を守る責任を負います。
資格の要件
石綿作業主任者は、厚生労働省が定める講習を修了し、試験に合格することで取得できます。
また、作業中の安全を確保するために、定期的な健康診断や適切な防護具の使用も義務付けられています。
現場監督が持っていなければならない資格ではありませんが、直接作業される業者さんの班には作業主任者の選任、そのほかの作業員さんには特別教育修了者を従事させる必要があるので要注意です!
石綿撤去作業資格の補足
1. 作業主任者の選任
アスベストを含む建材を取り扱う作業が行われる場合、「石綿作業主任者」を選任しなければなりません。この作業主任者は、以下の役割を担います。
- 作業計画の確認と立案
- 作業手順の指導と管理
- 作業者の健康管理と保護具の着用確認
- アスベスト飛散防止対策の徹底
作業主任者の選任は、労働安全衛生法第14条に基づく義務であり、作業における安全管理を行う責任者として配置されます。
2. その他の作業員の特別教育
作業主任者以外の全ての作業員は、「アスベスト取扱作業従事者特別教育」を受ける必要があります。この特別教育では、以下の内容が学習されます。
- アスベストの性質とその有害性
- アスベスト取り扱い時の安全な作業方法
- 作業時に使用する保護具の着用方法とその管理
- 飛散防止対策の重要性と具体的な方法
特別教育は、労働安全衛生法第59条および石綿障害予防規則第3条に基づき、アスベスト含有建材を取り扱う作業に従事する作業者全員に義務付けられています。
3. アスベスト撤去作業の手順と安全対策
アスベスト撤去作業では、法令に基づいた正しい手順と安全対策を徹底することが求められます。
さらに、労働者への情報提供として、事前調査結果の掲示が義務付けられており、作業者が作業環境について正しく理解することが重要です。
以下に、具体的な手順と安全対策、掲示義務に関する情報をまとめます。
1. 作業の手順
- 事前準備と作業計画の作成
- 作業区域の養生と負圧管理
- パッキン撤去作業
- 廃棄物の密封と処理
① 事前準備と作業計画の作成
- 作業計画には、アスベスト撤去の対象箇所、使用する機材、作業手順、飛散防止対策などを具体的に記載します。作業計画は、石綿作業主任者が責任を持って作成し、作業員全員に周知します。
② 作業区域の養生と負圧管理
- 作業区域をシートやビニールで養生し、飛散防止のための密閉空間を作ります。必要に応じて、負圧環境(負圧養生室)を設定し、排気装置で外部へのアスベスト繊維の漏出を防ぎます。排気装置には高性能フィルター(HEPAフィルター)を使用し、周囲への影響を最小限に抑えます。
③ パッキン撤去作業
- パッキン撤去は、非アスベスト部で配管を切断して行い、直接パッキンを破壊しないように注意します。作業区域を湿潤化し、アスベスト繊維の飛散を防止しながら作業を進めます。
④ 廃棄物の密封と処理
- 撤去したアスベスト含有パッキンは、専用の二重袋に密封し、「アスベスト含有廃棄物」としてラベルを貼り、管理します。認可を受けた産業廃棄物処理業者に委託し、法令に従った処理を行います。
2. 掲示義務と内容
建築物の解体・改修工事を行う際、事業者には事前調査結果を労働者が見やすい箇所に掲示する義務があります。この掲示には、以下の内容を含める必要があります。
- 事前調査が行われた箇所の表示
- 材料ごとの石綿含有の有無
- 立入禁止や安全対策の標識
事前調査が行われた箇所の表示:
事前調査が行われた建築物や部位を明確に示し、その部分がアスベストを含有するかどうかを労働者が確認できるようにします。
材料ごとの石綿含有の有無:
各部材(パッキン、断熱材、スレートなど)ごとのアスベスト含有の有無を明記し、作業者が取り扱う材料にアスベストが含まれているかを一目で確認できるようにします。
立入禁止や安全対策の標識:
作業区域内には、関係者以外の立入禁止、作業中の喫煙・飲食の禁止、作業主任者の氏名・資格などを掲示し、作業員の安全意識を高めます。
これにより、労働者はどの部分がアスベストを含むかを事前に理解し、適切な対応をとることが可能になります。
3. 作業者が着用すべき保護具
アスベスト撤去作業を行う作業者は、以下の保護具を必ず着用し、作業中の安全を確保します。
- 防じんマスク(DS2またはRL2以上):
- アスベスト繊維の吸入を防ぐため、国家検定合格品の防じんマスクを着用します。作業前にフィットテストを行い、適切に装着されているかを確認します。
- 防護服:
- 使い捨ての防護服を着用し、袖口や裾口をしっかりとテープで固定します。作業終了後は防護服を正しい手順で脱ぎ、適切に廃棄します。
- ゴーグルまたは保護眼鏡:
- 目の粘膜からアスベスト繊維が侵入するのを防ぐため、密閉型のゴーグルまたは保護眼鏡を着用します。
- 手袋と防護靴:
- アスベストの付着を防ぐため、手袋を着用し、防護靴は使用後に適切に清掃または廃棄します。
4. 緊急時の対応策
万一、アスベスト繊維が飛散する事故が発生した場合に備え、以下の緊急時対応計画をあらかじめ策定し、作業員全員に周知します。
- 緊急避難ルートの設定:
- 作業員が迅速に安全な場所へ退避できるルートを設定し、事前に全員で確認します。
- 医療機関との連携:
- 飛散事故時の健康影響に対する早急な対応を行えるよう、近隣の医療機関や産業医と連携し、対応体制を整えます。
これらの対策を徹底することで、アスベスト撤去作業を安全に行い、作業員と周囲の人々の健康を守ることができます。現場では、常に最新の法令やガイドラインを確認し、安全で適切な作業を心がけましょう。
4. まとめと注意点
アスベスト含有パッキンの撤去作業は、高いリスクを伴うため、法令遵守と厳格な安全管理が求められます。今回の内容を通じて、解体工事における事前調査、作業者の資格要件、そして安全対策の重要性を理解していただけたでしょうか。
事前調査では、石綿含有建材の有無を正確に把握し、工事計画に反映させることが、現場での安全を確保する第一歩です。この調査は、建物の解体や改修工事に入る前に必ず実施され、適切な資格を持つ専門家が行わなければなりません。
アスベスト作業主任者の選任と、作業従事者の特別教育の修了は、アスベストを含む建材を取り扱う際に欠かせない要素です。これにより、作業の指導管理、健康管理、そして飛散防止対策が徹底され、作業員と周囲の人々の安全を守ることができます。
安全対策としては、作業区域の養生や湿潤化の徹底、負圧養生室の使用、そして適切な防護具の着用が重要です。万一の飛散事故に備えた緊急時対応計画の策定も怠らないようにしましょう。
最後に、現場監督としての役割も非常に重要です。資格確認や作業計画のチェック、そして現場全体の安全管理を行い、作業員が法令に従い、安全に作業できる環境を整える責任があります。
現場での安全は、すべての関係者が正しい知識と意識を持つことから始まります。 今回紹介した内容を参考に、常に安全第一で作業に取り組み、アスベスト撤去作業のリスクを最小限に抑えましょう。
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