今回は、屋上などの防水として、多くの建物で採用されるアスファルト防水について確認していきます。
アスファルト防水は、合成繊維の布にアスファルトを浸透させたシートを、液体状のアスファルトを介して張り合わせて面で防水層を構成する防水工法です。
ひとくちにアスファルト防水といっても、その中に様々な工法があります、今回は最も一般的な仕様について解説していきます。
屋上防水は建物内部への雨水などの侵入を防止する目的で施工され、内部の設備や居住性を確保するために重要な作業です、しっかり管理してきましょう!
今回紹介する防水仕様はこちら↓
この記事で分かること
1.アスファルト防水の工事概要
2.アスファルト防水の施工の流れ
3.施工中に注意するポイント
順番に確認していきましょう!
アスファルト防水工事の概要
アスファルト防水は、屋上や庇上部などの面に対して防水層を構築するメンブレン防水のひとつです。
合成繊維の布にアスファルトを浸透させたシートを、液状のアスファルトで複数層貼り付けることで面として防水層を構築する工法です。
注意ポイント1
工事で使用する工法は、各メーカーさんで様々な工法を開発し認定をとっているため、メーカーカタログや仕様書を確認して工事計画を行います!
今回紹介する内容は一般的な仕様について解説しているので、メーカー仕様との差異については応用して工事管理してください。
注意ポイント2
溶かしたアスファルトを使用してシートを貼り付けていくため、アスファルト独特のニオイが発生します。
施工エリアをシートで囲ったり低臭型のアスファルトをしようするなど、周囲への配慮が必要です。
アスファルト防水工事の使用材料
つぎに、防水層を構築するための材料の確認です。
今回紹介する工法は、屋上アスファルト防水の外断熱+保護コンクリート仕様です。
アスファルトプライマー
下地とアスファルト防水層の接着性を向上させる役割をもつ材料です。
アスファルト
防水用アスファルトは、防水工事用3種という種類のものを使用します。
工場で原油を精製して作られる材料で水をはじく性質を持ち、常温では個体状、高温に熱すると液状になる特性をがあることから、建物に密着して止水性を持たせることが出来ます。
工事現場に持ち込むときには、袋に入れた状態または防水工事用に改良されたアスファルトコンパウンドという固体状で持ち込み、工事場所近くで溶解させて液状にしてから使用します。
アスファルトルーフィング
繊維や合成繊維をベース材として、アスファルトを仕込みませた防水用の材料です。
ロール状で搬入し、転がしながら敷き込み防水層を構築するアスファルト防水のメイン材料です。
このアスファルトルーフィングと溶解したアスファルトで下地に接着させながら敷き込み構築する防水層が、アスファルト防水です。
画像 出典:田島ルーフィング 公式HP
押さえ金物
建物外周の立ち上がり(パラペット)や、基礎の立ち上がり部分で防水端部を抑えるための金物です。
シーリング
防水の端部を抑える金物周辺からの漏水を防止するためにシーリング材を充填します。
ここで紹介するシーリング材はアスファルト防水用のシーリング材料で、現場ではアスファルトコーチングと呼ばれる黒いシーリング材です。
外断熱の場合
屋根躯体を構築するコンクリートより外部側に断熱を設置する工法を「外断熱工法」と呼びます。
外断熱工法を採用した場合に使用する材料の確認をしていきましょう。
絶縁シート
アスファルト防水と断熱材が接着して防水層を壊さないように縁をきるためのシートを張ります。
断熱材
板状で、ある程度の強度を持った断熱材を使用します。
断熱材は種類によって熱伝導率が異なります、要求されている性能をもつ材料を選定してください。
保護コンクリートを使用する場合
防水層の上を歩行したり、機械を運搬すると傷つけてしまう恐れがあります。
頻繁に防水層の上を利用する場合には保護する目的でコンクリートを打設します。
コンクリート
保護コンクリートはスラブほどの厚さを持たせる必要がなく、歩行用の強度が確保できれば良いため80~100mm程度の厚みで計画されることが多いです。
そのため、コンクリート内の鉄筋はΦ6mm程度のワイヤーメッシュを使用することが多いです。
伸縮目地
保護コンクリートが乾燥収縮などでひび割れることを防止する目的としてコンクリートを格子状に区切るための材料です。
アスファルト防水工事の使用機器
防水作業を行うための使用する機器の紹介です。
アスファルト溶解釜(ようかいがま)
固形状態で搬入したアスファルトを熱して液体状にするための機械です。
重たいのでクレーンなどで楊重する必要があります。
トーチ
防水用の大きいバーナーです。
工法によって材料を高温に加熱する作業に使用します。
水分測定器
下地がコンクリートの場合に、表面付近の水分量の残量による品質低下など、悪い影響が出ないことを確認する機械です。
出典:アクティオ公式HP
水張り試験用器具
バルーン、空気入れを使用してドレインなどを一時的にふさぐことで防水面に水を溜めることが出来ます。
出典:丸井産業 フーセンの寅
楊重機
防水を施工する場所である、屋上や庇上まで材料や機械を運ぶために使用します。
移動式クレーン・タワークレーンや、工事用エレベーターなどが良く採用されます。
防水工事の施工準備
防水工事を施工する前には、必ず施工計画書の作成を行います。
施工計画書には、実施する防水工事について手順や管理方法、検査の合格基準、施工体制などなど全ての内容を記載します。
工事は施工計画書に記載した内容に沿って進めることになるのでしっかりと作り込みましょう!
施工計画書テンプレートは各社で指定されているものを使用してください。
テンプレートが古いまま改定されていなかったり、改変されすぎてもともとの形が分からなくなってしまっている場合には、一般社団法人日本建設業連合会のHPにひな形(テンプレート)が公開されているので参考にしてみてください。
⇒施工計画書ひな形集(改訂版) 日建連関西支部 IT専門部会
施工計画書について解説している記事も合わせて参照してみてください。
アスファルト防水の施工方法
次にアスファルト防水の施工方法、工事の流れを確認していきましょう。
下地処理
防水層を施工する面の状態を調整する作業です。
水分測定
水分測定器を使用して下地面の乾燥状態を確認します。
水分量が多い場合には、防水層の接着不足や、気泡が発生して膨れの原因となるのでしっかり測定するようにしましょう。
入隅・出隅の処理
躯体の立ち上がり部の入隅をモルタルなどで面取りを行います。
アスファルト防水の場合、面取り部の面サイズは70mm程度が標準です。
シート防水などの場合は通り良く直角としてください。
出隅は共通して面取りをするようにします。
下地の勾配確認
保護CONを施工する場合は1/100~1/50の勾配を確保します。
保護CONを施工しない露出防水などは重ね部分などの水が溜まる恐れがあるため、勾配は1/50~1/20となるようにやや急にしてください。
ドレイン
ドレインは基本的にRC部分に打ち込んでおきます。
防水作業前には邪魔になるのでストレーナー(上のハット部分)を外しておきましょう。
ドレインは鋳物であること多く、素材は鉄・アルミ・ステンレスが使用されます、個人的には錆びなくてコストがそこまでかからないアルミが好きですね。
材料搬入
クレーンなどを使用して作業場所に楊重します。
材料を搬入したら、材料検収を行います。
搬入した材料の数量・仕様が正しいことを記録したら、防水材は飛散しないようにシートをかぶせた上にネットをかけて養生しておきましょう。
防水層の構築
防水層を構築する作業の順序を確認していきましょう!
アスファルトプライマー塗布
防水下地にプライマーをとすることで、下地の表面に被膜を形成して下地と防水層の接着性を向上させます。
アスファルトプライマー塗布した後は乾燥させ、ルーフィング類の貼り付けは翌日から行うようにします。
アスファルトルーフィング張り付け
溶解したアスファルトを使用して、アスファルトルーフィングを下地に接着させます。
1.まずは立ち上がり部分やドレイン周りに増し張り・ストレッチ性のあるルーフィングを張り付けます。
2.つぎに平面をアスファルトをひしゃくで流しながらアスファルトルーフィングを貼り付けていきます、ルーフィングの重ね幅は、長手・幅方向ともに100㎜確保します。
3.ルーフィングを仕様に合わせて複数層重ねていきます。
1層目の2層目では重ね位置が同じ場所になると雨水がたまり、防水層として脆弱になってしまうので、各層の重ね位置は必ずずらして張り付けましょう。
押さえ金物設置
立ち上がり部分など、防水層の端部は金物で押さえ、アスファルトコーチングで充填して止水性をもたせるようにします。
水張り試験
防水層の構築が完了したら実際に防水面に水を張り、下階や外部へ漏水が起きないか確認します。
ドレインなどの排水設備はバルーンなどを使用して一時的に排水できないように準備をおこない、水を溜めたら印をして24~48時間間隔を置きます、水位の現象が5㎜以下であれば合格です。
断熱層+保護層の構築
防水層の構築が完了し、水張り試験によって漏水が発生しないことを確認したら。
断熱材を敷き込み、保護コンクリートを施工していきます。
断熱材敷き込み
外断熱工法の場合には、防水層を構築後に板状の断熱材を敷き込みます。
コーナー部分は下地面で面(テーパー)をとっているので、断熱材も面にあわせて施工します、キャント材と呼ばれる部材が該当します。
伸縮目地設置
保護コンクリートのひび割れ防止ために伸縮目地を先行して設置します
目地の間隔は、縦横それぞれ3m以内で設置し、パラペットや立ち上がり際から600㎜以内の位置に設置します。
保護コンクリート打ち
目地設置後にワイヤーメッシュなどの配筋を行い、保護コンクリートを打設してきます。
コンクリートの配合は設計図記載の強度としてください、構造体ではないので通常はスラブコンよりも強度の低いものが採用されます
清掃・器具付け
保護コンクリートの養生完了後、目地上の清掃やドレインストレーナーの設置などを行って防水工事完了です。
屋上では次工程として、設備機器や配管、電気配線などが行われます。
保護コンクリート面はそのまま仕上げ面となりことが多いです、配管などの作業中は汚れないようにシートを敷くなどして養生をするようにしましょう。
アスファルト防水の特徴:まとめ
今回は、メンブレン防水のうちアスファルト防水について確認をしました。
アスファルト防水は屋上などで多く採用される防水工法のため、建物の品質に大きく影響します。しっかり管理する必要のある工事です。
注意する施工管理ポイント
・アスファルト防水はニオイが出るので対策が必要
・工法はメーカーさんが認定を取っているので認定仕様を確認して施工する
・工事前には施工計画書を作成する
・下地は、水分を測定しておき、入隅・出隅の処理をおこなう
・防水層を施工したあとに水張り試験を行って漏水がないことを確認する
・保護層の上面はそのまま仕上げとなることが多いので汚さない
防水工事は建物の寿命・品質に大きく影響する工事のひとつです、しっかり管理して施工していきましょう!
今回は以上です、ではまた!
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