既製コンクリート杭と鋼杭の地業工事は、建物の支持力を確保するための重要な工程です。
地盤の特性に合わせて適切な杭工法を選定し、施工管理を徹底することで、建物全体の安定性を高めることができます。
本記事では、既製コンクリート杭と鋼杭に関する工法の詳細や施工管理の要点について、具体的な技術や手順を交えて解説します。
施工現場での品質確保に必要な知識を学び、安全で強固な基盤を構築しましょう!
本記事は、地業工事の施工管理を徹底解説するシリーズの一部です。
地業工事の基礎知識から掘削作業、盛土・埋戻し、仮設工事、安全管理、コスト管理や施工後のメンテナンスまで、施工管理者として押さえておくべき重要なポイントを詳しく紹介しています。
各記事を読むことで、現場での施工管理に役立つ知識を深めることができます。 他の関連コンテンツも併せてご覧いただき、実践に活用してください。
既製コンクリート杭地業とは?:その基本と工法の選び方
既製コンクリート杭は、あらかじめ工場で製造されたプレキャストコンクリート杭を使用し、現場で打設や埋込を行う工法です。
この工法は、杭の強度や耐久性を確保するために広く使用されており、セメントミルク工法や特定埋込杭工法などが代表的です。
特に、高層ビルや大型施設の基礎工事では、既製コンクリート杭が採用されることが多く、地盤の強度に応じて杭を適切に配置することが、建物全体の安全性に直結します。
杭の長さや太さ、杭間隔などは、設計図書に基づき決定され、杭の施工精度がそのまま建物の支持力を左右します。
主な工法の解説
- セメントミルク工法
- 特定埋込杭工法
セメントミルク工法
セメントミルク工法は、アースオーガーを用いて地盤を掘削し、掘削した孔にセメントミルクを注入しながら既製コンクリート杭を建て込む方法です。
この工法では、根固め液(セメントミルク)を使って杭周囲の地盤を補強し、杭と地盤を一体化させることが特徴です。
掘削時に使われるアースオーガーは、掘削径を厳密に管理し、設計された杭径に合うように掘削します。通常は、杭径+100mmの掘削が行われ、掘削径の誤差を最小限に抑えることで、杭の支持力を確保します。
重要なポイントとして、掘削孔の崩落を防止するために使用する安定液の管理が挙げられます。安定液には、ベントナイトスラリーなどが使われ、掘削孔の壁を安定させながら、杭打ち工程を進めます。また、掘削中には、土質調査資料を元に、予定した支持層に到達したかどうかを確認します。
特定埋込杭工法
特定埋込杭工法は、打撃工法を用いて杭を打ち込む方法です。この工法では、杭を打設機で地盤に直接打ち込み、必要な支持層に杭を到達させます。
杭打ちには、ドロップハンマーや油圧ハンマーを使用し、杭の鉛直度や打ち込み深さを随時確認しながら施工を進めます。
支持力を確保するためには、地盤の特性を考慮し、最適な打撃方法を選定します。
例えば、静的荷重試験や動的荷重試験によって、杭の支持力を評価し、基準に適合していることを確認する必要があります。
既製コンクリート杭のメリット
- 品質の安定性
- 施工効率の向上
- 高い支持力
- 品質の安定性:工場であらかじめ製造されるため、コンクリートの品質が均一であり、強度のばらつきが少ない。
- 施工効率の向上:現場での打設作業が迅速で、工期短縮が可能。
- 高い支持力:軟弱地盤でも、しっかりと支持層に杭を打ち込むことで高い支持力を確保できる。
鋼杭地業の施工管理:安全性と強度を高める技術
鋼杭地業は、特に耐震性や荷重分散が求められる建物に適用されます。
鋼杭は、コンクリート杭と比較して引張り強度や圧縮強度が高く、長大な杭を使用する際に優れた選択肢となります。
特に、地盤が非常に軟弱で、杭を深く打ち込む必要がある場合に採用されます。
鋼杭の主な工法
- アースオーガー工法
- 油圧ハンマーによる打撃工法
アースオーガー工法
アースオーガー工法は、杭打ちの際に用いられる掘削機械の一種で、鋼杭を挿入するための杭穴を掘削します。
この工法では、孔壁の崩壊を防ぐために、安定液や泥水を使いながら掘削を進めます。掘削時には、孔径や深度の精度管理が非常に重要であり、地盤に合わせて掘削方法を調整します。
掘削完了後には、杭の鉛直度を確認し、鋼杭を挿入します。その後、掘削孔をスライム処理などで清掃し、トレミー工法を用いてコンクリートを打設することが一般的です。
油圧ハンマーによる打撃工法
鋼杭の打ち込みには、油圧ハンマーがよく使用されます。油圧ハンマーは、杭に強力な打撃を与え、地盤に杭を確実に打ち込むための機械です。
打撃力の制御が可能で、杭の傾斜やずれを防ぎながら、深く正確に杭を打ち込むことができます。
継手の施工と管理
鋼杭の継手部の品質管理は、杭全体の強度に直結します。
鋼杭の継手には、アーク溶接や機械式継手が使われますが、溶接の場合は、非破壊検査を行い、溶接部の強度を確認します。
特に、超音波探傷試験や磁粉探傷試験などの技術を用いて、溶接不良や亀裂がないことを確認します。
- アーク溶接
- 機械式継手
- アーク溶接:施工時には、溶接資格を持つ作業者が作業を行い、適切な手順で杭の上下を溶接し、一体化させます。
- 機械式継手:ボルトやナットで締結する方式で、施工時間が短縮でき、作業効率が向上します。
施工記録の重要性:品質管理を徹底する
地業工事における施工記録は、品質管理の基本です。
杭の打設過程や、使用材料の特性、施工機械のパラメータなどを正確に記録することで、後々のトラブルを防ぐことができます。特に、以下の項目は必須です。
- 杭の打設深度:設計通りの深さに杭が打ち込まれているかを確認する。
- 杭周固定液の注入量:必要な量が正確に注入されているかを記録。
- 杭の鉛直度と位置ずれ:施工中の杭の傾きや位置のズレがないかを随時確認する。
- 支持層の確認:予定の支持層に杭が確実に達していることを確認するために、現場監督者の立ち会いが求められます。
施工記録の保存期間についても、法令に基づいて適切に管理し、監督職員に提出することが必要です。
まとめ
既製コンクリート杭・鋼杭地業は、施工の中でも特に重要な工程であり、その管理には正確な技術と高度な知識が要求されます。
セメントミルク工法やアースオーガー工法など、具体的な工法や機械の選定を適切に行い、施工記録を徹底することで、安全で高品質な建物基盤を確保しましょう。
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