今回は、建物を地盤へ力を伝える役割をもつ基礎のうち、杭基礎(杭工事)の工事の特徴と流れついて解説していきます。
基礎は建物を最も深い位置で支える重要な構造体です、その中でも採用率の高い杭基礎についての施工管理のポイントを確認していきます。
杭工事は若手職員が現場に就いてすぐに担当することが多い工種です、始めて杭工事の担当者になって「まず何をするかわからない」「指示はされるけど順番や重要度がわからない」そんな悩みを解決できる内容です。
この記事で分かること
1.杭基礎とは?
2.杭工事着手までに行う業務とは
3.杭工事の施工の流れ
4.杭工事の管理記録を残す項目
順番に確認してきましょう!
杭基礎とは?
基礎は、建物の重量や積載荷重、地震や風や土圧・水圧などによって発生する力を、地盤に伝える役割があります。
基礎の構成は、杭+基礎スラブで構成されています。
今回の記事では「杭基礎」を中心に確認してきます。
杭工事の施工時期は?
杭工事の施工時期は、山留工事が終わった後に行われることが多い工事です。
建物の本工事としては一番最初に行われる工事です。
杭基礎の流れを確認
杭基礎のうち、特に建築工事で採用されることの多い既成コンクリート杭を施工する工事を想定して、技術者目線で工事の流れや準備するべき内容を確認していきます。
確認申請済証の受領後に杭発注
どのような杭を使用するかは設計時に計画し設定されています。
必要な支持力を満足できる杭であり、そのなかでも経済的な工法を設計部門で選択・採用しています。
既成杭は制作に時間がかかるため、基本的には確認申請済証を受領次第、杭メーカーへ発注をかけることが多いです。
契約見積書の確認
自身が杭工事の工事担当者になったら、まずは契約見積書を確認してみましょう。
工事に着手している時点で、杭メーカーや杭施工業者さんとの契約は完了していることが多いです。
契約見積書には杭業者さんが数量や作業をどこまで見込んでいるか記載されています、工事の全体がおおまかに把握できるので最初に行ってください。
責任区分の確認
元請が手配・作成するもの、杭業者さんが手配・作成するもの、をそれぞれを確認していきます。
※注意!あくまでも一例です!
杭工事施工前に行う準備
つぎに、杭工事を行う前に建設現場の管理者がおこなう準備について確認してきましょう!
杭伏図(施工図)の作成
構造設計図に記載されて内容から、実際に施工をするための詳細な寸法や仕様を記載した施工図を作成します。
施工図は元請の責任で作成し、工事監理者の承認を得る必要があります。
杭施工図を作成する時に注意するポイントを確認していきます。
などを記載しておくと良いですね。
基準レベルの設定を工夫しておくと◎!
レベルの管理方法は、先輩や杭業者さんに聞いてみると使い勝手の良い方法を教えてくれます。
杭工事中の仮設計画図の作成
ここでのポイントは、重機の位置が変わるごとに作成することです。
現地にて杭芯の位置出し
施工中などに杭芯が無くなっても復旧できるように逃げ杭や印を設置します。
基準の印は、単管などで囲って「さわるな」の看板なども設置して、だれにも触られないようにすることが大切です!
場内にレベルの逃げ墨を設置
見間違い防止を心掛けることが大切です。
設置レベル墨は基準を統一すると勘違いや見間違いを防止できます。
⇒1FL+1,000でテープの下端を基準とする!など明確が基準設定が大切です。
仮設の手配
杭残土処分業者との産廃契約
杭残土は基本的に建設廃棄物として処分します。
搬出時の土の形状は事前に確認するようにしてください。
⇒処分業者さんによって、所有する車両の形状や台数の違い、処分方法がかわるためです。
ドロドロでもいいのか、固める必要があるのか、コストを比較して決定します。
施工計画書作成
施工計画書に記載された内容を現場で行うことになるので、工事で行う内容をほぼ全て記載します。
施工計画書の作成業務は、手配漏れや確認不足をチェックするツールにもなります、大変ですがしっかり作り込むことで現場でのミスを防止できます!
施工検討会資料作成・検討会開催
施工前検討会は全ての関係者が参加して行われます。
施工内容や、役割分担、品質基準、安全管理基準などなど、工事前に共通の認識で取り組めるように準備をします。
杭工事の本施工の流れ
試験杭
試験杭=監理者が立会う杭の施工です。
試験杭は各杭打機の本杭の1本目と、全体の数や施工範囲によって数か所行われます。
試験杭を行うときに確認する内容は、杭の施工管理状況の確認と、現地の支持層の土質とボーリング試験時の土質サンプルと比較確認をします。
※試験杭時に確認項目や箇所数は事前協議して、施工計画書に記載しておく。
本杭施工
杭施工時の注意ポイントです。
完了報告・次工程準備
杭の最終的なズレ・高さは掘削直後に実測。
①杭位置を図面におとしてズレは許容範囲内であるか確認します
地中梁・柱筋・鉄骨のアンカーフレームと杭頭筋の干渉が無いか、どの位置なら干渉せずに収まるか確認します。
②高さを確認して杭として許容範囲内であるか確認します
フーチング基礎への飲み込み長が確保できているか。
フーチングの鉄筋(ベース筋)への干渉が無いか確認します。
元請がおこなうこと:検査記録・記録写真
杭業者がおこなうこと:杭工事施工報告書
杭工事の現場管理ポイント
使用機械・機材の記録
プラント、検尺棒、継手用機械(嵌合機・ラチェット)などの機器の校正状況を撮影します。
掘削オーガの径、拡大翼の径の寸法確認します。
杭施工の記録
材料の記録
杭材料の確認:長さ・径・節径・種類(刻印)
スケール、スタッフロッド、リボンロッドなどで寸法が分かるように撮影する
溶接材料の確認:溶接棒、プレートやボルト
杭周液の材料:セメント・ベントナイト
杭芯ずれ防止
杭芯からの逃げ芯位置を確認⇒X,Y方向にそれぞれ設置します。
杭芯セット⇒逃げ芯からの位置確認、杭位置と掘削位置がずれていないことを確認します。
掘削時の鉛直度・掘削速度の管理
トランシット等で鉛直度の確認します。
運転手とは違う角度から確認を行うことがポイントです。
支持層の確認
電流計・積分電流計の情報と柱状図を比較する。
試験杭の時には支持層の土と、土質標本の土を比較確認する。
※土質標本とは標準貫入試験時に採取されて現場に柱状図ともの保管される土の資料。
拡大確認
拡大翼の根元に設置したピンの変形などを確認。
ピンのビフォーとアフターの記録を拡大出来たエビデンスとして残します。
各種注入液
注入時期・注入量を管理装置にて確認。
注入液の配合確認⇒マッドバランスを使用して密度確認して記録します。
注入液のテストピースを作成して圧縮強度を確認します、現場ではテストピース作成状況を記録します。
杭建込状況
所定の杭の順に建てこまれていることを記録しましょう。
下杭ー中杭、中杭ー上杭など杭種が分かる様に工事黒板に記載して記録するようにします。
杭傾斜の防止
建て込み時にトランシットを使用して確認します。
埋め込み前に、杭にデジタル傾斜計をあてて垂直であることを確認します。
杭継手
溶接継手⇒杭同士を溶接して接続します、使用材料・施工状況・溶接完了状況を記録します。
無溶接継手⇒各メーカーで認定をとった工法がいろいろあるので、認定に沿った記録を行います。
杭天端高さの測定
所定の深さに埋め込んだ杭の杭天端に、検尺棒をあてて高さを確認します。
オートレベルを使用して、事前に設置したレベルの逃げ墨からおって高さを正確に確認します。
まとめ:杭基礎工事の概要と工事の流れ
今回は、基礎工事の中でも採用率の高い杭基礎の既成杭工法について、施工前の準備と施工時の管理ポイントを紹介しました。
準備段階で作成する施工計画書や仮設計画図に記載する内容や、杭施工時に行う写真記録の項目については施工前にはあたらめて確認いただきたい重要な内容です。
やるべきことが多い工事ですが、施工準備と管理する項目を事前に把握することで焦らずに作業を進めることが出来ると思います。
今回は以上です!ではまた!
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